新版 / 第一章

第五話・上 会いたい

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「で!だねぇ、、、いろいろ“条件”があるん、で、す、がぁ〜、、、」

ゴンッ。

少し痛い。アキに殴られた、、、

「こらっ!大事なことなんだからちゃんと話しなさい!」

「はーい」

- うぅ、、、

- わかるけど拳骨はしなくていいじゃん!

アキを見たら睨まれていて、

(また暴走したお前が悪い)

って思考で怒られた。

- あ、、、

今度は諭すような目で、

(お前が頼んだんだろう?)

- ふふんっ!

- そっか。私のためか!

- じゃあね?ちゃんとしよう!

「まぁざっくり言うと私の正体を詮索しないで欲しいというか、私を人間だと信じて欲しいっていうか、、、」

- 正直に言い過ぎた、、、?

千葉が残念なものを見る目をしながら、

(だいぶ、無理がないか、、、?)

って思考が漏れ出してた。

- だよねぇ、、、

- あきぃ、、、ほんとに大丈夫?

*

*

*

ちょっと前に街で偶然、見かけた?っていうか感じた。

狐道で見かけた人間と、似た霊力・霊格の人間を

もしかしたらもしかするかも!ってアキに話したら、複雑な表情をされた。よくわかんないけど。

まぁそれでね。鬼海なら知ってそうって思って問い詰めたら、案の定の大当たり。依頼も引き受けることにはなったけど、まぁいい。

千葉を、ようやく見つけた。

それからは長かった。けどつい最近、鬼海から連絡が来た。三日後に来ると。つまり今日。

ようやく会える。そう思ったのに、、、

全然来ない!

家の住所まで問い詰めるべきだった。

もう日が暮れたぞ、、、?本当に来るのか?

ああ!遅い!遅すぎる!もう待ちくたびれた!!こんなに遅いなんて聞いてないぞ!!!

もういっそ病院に突撃して喚き散らしてしまおうか。

そう思った。ちょうどそのとき

ガチャ、ギィーーッ。カランカラン。

下から聞こえてきた来店の鈴。アキの声。それからあの男の声。

- 狐道で見かけたあの光景

- 私と一緒に歩いてたあの人間

- そいつの声だ!!

- 覚えてる!!

- きっとそうだ!!

- よし!!!!

「来たな!!!!」

- ようやく!

- ようやくだ!!

- あの不確かな未来に!!

- 焦がれたあの未来に近づいた!!!

寝転がっていた姿勢から、飛び起きた。

積まれた漫画が崩れ落ち、缶ビールが小さくない音を立てて転げ落ちる。でも気にならない。気にしていられない。

赤い羽織りをハンガーから掴んで袖を通し、駆け足になりかけて

- おっと!

- 焦らない焦らない、、、

まずは見た目を整えないと。鏡を見て少し髪を整える。第一印象が肝心だよね。

- ああ、でも、待ちきれない

- 切望したあの未来

- 未来で見たアイツ、に、会える

鬼海にはなんて言われた?イナリには神だったとバレるなって言われたな。だから契約をするんだ。私は学んだんだ。あ!そうだ!鬼海は、千葉なら『特別な景色でも見せればいいんじゃない?』って言ってた!こんだけ待たされたんだ!千葉には先出しで僕の記憶を見せてやろう!!なにがいいかな、、、

軽い支度を急いでこなし、

それ以上の速さで思考が回る。

気がつけば階段を降りていて、、、

- いた!!

- あいつだ!!!!

- やっと、、、

- やっと会えた!!!!

*

「会えて良かった」

*

「、、、本当に、、、こうして話せているってことは、、そうだよね!うん!近くで見ても間違いないのだ。ああ!!」

- やった!!

あれ?でも、なんか、、、違う?

見た目も声も、、、同じ、、、じゃあ霊格?、、、そうだよ!霊能力だ!!狐道で見たアイツに比べて弱い、、、なんでだ!?でも正体はバレにくいし、都合がいい?、、、うん!いいや!

「ん?あぁ、、、あ!“これ”が言ってたやつか。まぁいいですかね」

- 鬼海が言ってたやつか。

- 確かにアイツには無理だな。

- 煩わしい、が、まぁいい。

- 契約の恩恵に使えそうだしな!

- いや、ほんとうに都合がいい!!

*

*

アキに怒られた。でもいい。これくらい。

そうだ。アキに言おう!!

「ようやく会えたんだ!鬼海のとこにいた!」

「そう、、、なのか。よかった、、、な」

(候補じゃなくて本物だった、か)

「アキ!ねぇ、アキ!やっと会えたんだよ!これでようやく!あの未来に、、、」

「落ち着きなさい」

「でも!だって!」

(バレるぞ?)

「うぅ、、、」

「まず、ちゃんと説明をしなさい!」

「ウチで働く!!」

「は?」

「鬼海のとこの患者だったの!だから貰った!」

「はぁ!?!?」

(ざけんじゃねぇよ。ちゃんと説明しろ!!)

*

*

(やっぱり“契約”するのか?)

- だってイナリが言ってたから、、、

(お前のポリシーに反するんじゃないか?)

- だけど!!

- オレは、、、私は!人間と思われたい!

(はぁ、、、わかった)

「ナギ。だったら相手の話をちゃんと聞きなさい。そして目の前の相手をしっかり見ろ」

「わかった、、、」

*

- まずは落ち着いて〜

「ねぇ〜酷いと思いませんか?」

(お前の口調の変化の方が酷いわ)

「それよく言われんですよねぇ」

- でも、面白いじゃんね?

- それにボクは覚えてる

- 時代は変われどアイツらのことを、、、

- 絶対に忘れない

*

*

( コイツは、なんだ?)

「だからだからだから!人間だって言ってんじゃない!?」

- なんでわかってくれないんだよ!?

神威が暴発した。そして受ける

“罰則”

*

ああ!!もう!!なんでだ!?!?

我は!俺は!人間だって!!

言っておろうに?!?!

なぜに話が通じんのだ!!!そして!

こんなにも、つまらない男だったか!?

期待を返してくれよ?なぁ?

なんでここまで生に希望がないんだ?!

あぁ!そうだ!じゃあ!

死後の世界を見せてやろう!!

*

「もういい!!話が進まんけぇ!!そうだなぁ、、、地獄!地獄ならば多少はまぬがれるし、、、おい!千葉!」

「あぁ?」

「“取り引き”です。面白いものを見せてやるから、吾輩がする話を信じろっ!!」

(意味わかんねぇ)

- この凡愚が!

- 説明しないとわからぬのか?

「おまんが今までしたことはないであろう‘体験’を、僕が、させて、あげる、って言ってるんだ」

- さぁ、、、どうする?

目が合った。

千葉の瞳に熱が、火が、灯った、宿った?ように、私からは見えた。

思考じゃなくて視覚から、、、

だから、聞いた。

「見てみたいか?」

(見てみたい)

- よし

「ならば了承するが良い」

「わかった」

- いいだろう。とくと見よ!

*

*

*

“罰則”

うがっ!あ“あ”あ“あ”!!

あああああああああああ!!!

グゥ!くっっっっ!!!っっっそ!!!

っっっっってぇ!!!あ“あ”あ“あ”!!

全身に響く雷みたいな痛み。自業自得とかうっせぇ!わかってる!我が制定した“禁則”をボク自身が破ってる!わかってる!!うっせぇなぁ!!いい加減にしろよ!!クソッタレ!!

*

*

「ちっ」

あれは契約にはならなかった。私がしようと思ってた本来の契約じゃなかったからいい。でも、くそ、、、いてぇ、、、

先走りすぎた、、、どの禁則だ?頭がまわらん。

- まだいてぇ、、、

*

「はぁ、、、」

「大丈夫か?」

アキが水をくれた。

霊力は千葉と繋がったまま。

まだ地獄を見てるな。

- あの姿を見られずに済んでよかった。

「大丈夫大丈夫。あははは」

「馬鹿野郎」

「ごめんね。でも今は千葉を見ないと」

「当たり前だ。なんでこんなことをした?地獄を見せるなんて、、、」

「でも鬼海が、、、あいつも来るの遅かったし、、、」

「精神崩壊してもおかしくないんだぞ!ちゃんと人間を理解しろ!早く見守れ!危なかったらすぐ戻すんだぞ!」

「うっ、うん!!」

慌てて目を閉じる。意識する。

千葉と繋がった霊力から、思考を読み取る。

 |

 |

- ってあれ?“冥境”まで見てない!?

- そうだ!地獄の真上にあったや!!

- 忘れてた!!

- やばいやばいやばい!!

- 早く切らなきゃ!

- あれは、さすがに、壊れる!!!!

- 、、、ん!?

- 順応した!?!?

- すご!!

- こいつ意外とオモシロ!

- え、描く?

- 地獄をか?

- なに?憧れ?

- 意味わかんねぇ!ぶっとんでんな!!

- ってかウチの感情丸見えやん!

- はずっ!うわ!!

- え、どうしよ、、、やめたい、、、

- でも必死だしなぁ、、、うぅ、、、

- がまん、、、がまん、、、

*

- あ!そういえば!

- トカから視線を感じたんだった!

- それで目が合った時だ!!

- ってかアイツ、千葉の視線に、、、

- ああ!アレってそういう、、、じゃない!

- まじやばい!

- トカはやばい!!

- 人間には危ない!!!

- 今度こそ本気で壊れる!!!

- 早く切ろう!!!

- ごめんね!!

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 |

プツンッ。

千葉との霊力のつながりを切った。

そしたらすぐ

(描きたい)

(描かなければ)

思考を見ようと意識していたおかげで、霊力の切断後も大量の思考と感情が流れてくる。

これは欲求や煩悩ってよりも執念だ。

「はは!マジで面白れぇなコイツ」

私がずっと待ってた男。千葉詩生《ちばうたき》

最初は期待外れと思ったが、地獄を見せてから、うん、一変したねぇ、、、

“罰則”は計算外だったけど、まあ、うん、まぁいい。いいんだよ、、、

考えなしとかじゃないもん。うん!

- まぁいい!!

地獄を見せようって思ったのは、うん、一応ね?思いつきだったけどね。そこは良い判断って認めてもいいかな。だって、、、

- 見せてよかった!!

期待ハズレは撤回しないとなぁ、、、こんなヤツだとは思わなかった。表層だけじゃなくて奥まで見てみたいな。

- アイツは何を抱えてる?

- 気になるなぁ。

っていうかトカの言った通りになってんじゃん。アイツまじなんなの!?意味わかんない!

「はぁ、、、」

嫌でも勝手に記憶が蘇る。

確か、地獄の視察、千葉に見せた記憶のちょうどあとだったような、、、冥境、この時は“冥廻境”だっけ?どうでもいいか。

なんか目が合った理由を聞きに行ったんよね。

*

*

*

「お主、先程の記憶を、いつか誰かに見せるじゃろうな」

「来てそうそうなんなのさ!?」

「見せるならつまらん“ぬるま湯”じゃのぉて“ここ”でよかろうに」

「いやどっちも見せたいと思わないよ」

「なぜじゃ?美しいじゃろぉ!」

「トカはね、、、」

「つれないのぉ。そもそもの話、お主が、己の意思で、ここに来たんじゃろぅ?滅多に来ないお主がな。別に本座には関係ないことじゃがのぉ」

「うっせぇなぁ!いいじゃん!!べつに!!」

「大方、あの愚物に嫉妬でもしたか?羨望の裏返し、じゃな。阿呆らしい正義感が先走ってる愚物と違って、お主は、本当に、かわいいのぉ」

「もう帰る!!」

「わかっておろうな?図星というやつじゃぞ。ほんに愛いやつじゃのぉ。よいよい」

「さっきからなんなのさ!」

「本座はのぉ、、、

お主の欲望を肯定している。それだけじゃ」

「そう、、、じゃあ忙しいから帰るね」

「いつでも来い」

「出来たら」

*

*

*

トカは最後まで微笑んでたな。邪悪に。

- 本当に意見が合わない

- 欲望を肯定している?

- トカにされてもな、、、

- でも

懐かしい。いっつも偉そうなんよねぇ。妙に色っぽい服ばっか着てるし、、、目のやり場に困る。そのくせ距離が近いし、、、特にあの燃え盛るルビーみたいな瞳。やっぱり苦手。

うん。

でもいろいろ思い出してきた。

真っ赤な髪を豪勢に結って、

いっつも寝そべって、冥境を眺めてる。

無茶苦茶に派手で豪奢な城の天守閣で。独り。

うん。

- イナリとは大違いだ

- うん!

なんか猛烈にイナリに会いたくなってきた。

- あぁ、、、

- 会いたいなぁ、、、

 

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