初期版 / さまざまな神さま

決着と百面相

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「ちょっと遊んだだけじゃない? いやねぇ」

 

「ちょっとでも、だけでもねぇだろ!!表を出たあとから詩生うたきに《《力使ってた》》よな?知ってんだよ!クソ!」

 

えっ! 俺なんかされてたの?

あとやっぱ、、

 

「え〜《《欲を引き出してあげた》》だけじゃなぁい?」

 

「お前、詩生うたきまで《《堕とす》》気だったよな!?」

 

堕とすってなに? どういうこと!?

ってかまた、、ん〜、、、

 

「あらぁ〜なんのことかしらぁ?」

 

「あ"ぁ!? ざけんなよ!? 《《魅了》》までしてただろうが!!」

 

ナギの怒りは、爆発の直前で膨れ上がった火山のようだった。

怒声が、これまでの中で一番大きい。

 

その瞬間、別種の威圧感を覚えた。ナギを中心に全体へ湧き出るように漂っている。トカよりも強く、でも神聖な空気が部屋中を満たした。

 

不思議と苦しくはない。むしろ馴染むような慣れてるようなそんな感覚。

 

ナギが出してるよな。やっぱり、、、

 

いや、違う。

 

俺は咄嗟に払拭した。

今まで何度も浮かんできた脳裏に考えを。

 

だってナギは、《《人間だって言ってたから》》。

 

「ふふ、久しぶりだわぁ! この感じ」

 

完全に楽しんでるなぁ、、、

 

ふたりの口論? 喧嘩? はどんどん激しくなっていった。俺を蚊帳の外に置いて。

 

気がつけばトカの威圧感も対抗するように強くなっている。

 

でも拮抗してるせいか、それともナギのおかげか、なんの影響もなかった。

 

それにトカは、もう俺のことなんて眼中にない気がする。だけどたぶん、ダダ漏れらしい俺の思考を聞いてる可能性はありそう。ナギは、ブチ切れててそんな余裕はないだろうな。

 

まぁそんな訳で、安全がとれたから、ひとり悶々と考えに耽ってるわけだけど、、、

 

うん。考えることが多すぎる。

整理しよう。

 

トカに俺はなんかされてて、しかもさっき殺されかけて、いや殺す気はなかったか? でもまじで死ぬかと思った。死ぬ寸前くらいまではいってたと思う。そんで、そのときナギが助けてくれて、、うん。あそこからだよな。しかも現在進行形。気になるけど、今言うのもなぁ〜。

 

ナギも俺のことで怒ってくれて、る、し、、?

 

俺はすっかり、死にかけた恐怖やトカへの危機感もだいぶうすれ、思考の渦の中にハマっていた。するといきなり大きな音が響いた。

 

バキッ!

 

「ギャッァ!!」

 

トカが悲鳴をあげた。

 

そして、ナギの片足が本尊の岩に置かれている。表情は俯いてるせいでよく見えない。

 

だけどわかる。怒りが限界に達したようだ。

 

それでついに本尊まで蹴ったか、、

紫に輝く石の欠片みたいなのがいくつか床に散らばってるし、、、

 

ってか!大丈夫なの!?

さすがにヤバくないか?

 

なんか人為的に凹んだ跡がいくつもあったから、トカの方は問題ないと思う。逆に問題あるのは宗教法人のご本尊だってことだ。しかもわざわざ壁を隔てて隠してるくらいだしそれなり重要そうなんだよな。まぁその壁にも穴が出来たわけなんだけど。

 

どうすんだこれ、、、

 

「いっっった!ソラナギ!貴方ねぇ、、」

 

俺が勝手にいろいろ不安になって焦ってると、トカは本妻にビンタされた不倫相手みたいに声をあげた。さすがに迫力は桁違いだが、、でも、

 

やっぱこれくらいは大丈夫か。

 

ってか無駄な心配してる場合じゃない。

本格的に喧嘩が始まりそう、、、

 

このままだと、確実に俺も巻き込まれる。最悪、また死にかけるどころじゃ済まない。

 

そう思った矢先、トカが威圧感をさらに強めた。

 

でもそれを遥かに上回る強大なナギの威圧感、というよりオーラみたいな白く光るものが緩やかに拡散し、部屋を埋め尽くす。

 

俺は眩しくなって目を閉じた。

 

 

◆

 

 

目を開けると《光は》消えてた。

 

すべてが終わったように、場が静まり返っている。

 

何も聞こえなかった。何も壊れてなかった。だけど、確実に人智を超えた何かが起こっていた。

 

俺にはどうにも、説明できそうにない。

 

そして、ナギが口を切る。

 

「もう一度だけ言う。これ以上詩生うたきに手を出すなら、アンタを《《抹消》》する」

 

凍てつくほどに冷淡に、それでいて苛烈な怒りを凝縮して詰め込んだような声だった。

 

「はぁーあ、こうさーん。やっぱ貴方は人間のことになると怖いわねぇ〜」

 

「次はない」

 

「もうやんないわよぉ〜信じられないかしらぁ?」

 

「チッ」

 

ナギはしぶしぶ、怒りを収めつつある。でも周囲には、ナギが発している威圧感がそれなり強く漂っている。それなりに時間がかかりそうだ。

 

しばらくはこのまんまだろうなぁ、、

正直言って少し申し訳ない。

俺はもう大丈夫だからもうそこまで怒らないで欲しい、、、

 

「ソラナギ、貴方さっき本気だったでしょぉ? そこまで怒ることかしら?ちょっと彼に悪戯しただけよぉ?」

 

「あ"ぁ!?」

 

あれが悪戯? もうやだこの神さま。

 

「ちょっと痛っかったんだからぁ〜。ひどいわねぇもぅ。せっかく《《綺麗にしてもらってた》》のに」

 

「は? これくらいどうってことないだろ!あのクソみたいな苦行で慣れてんじゃないか?」

 

「またひどぉ〜い。あれは、、《《愛なのよ》》。痛いわけないじゃなぁい! 私の愛し子たちが死をものともせず、それこそ必死で! 頭を鮮血で綺麗に彩りながら、私の《《神髄》》に無我夢中で、何度も! 何度も! 打ち寄せて、私への愛寵を強く訴えかけてくれてるの!だから、痛くないの。だってとっても情熱的なのよぉ? 私はいつもキュンキュンしちゃうわぁ!」

 

俺は絶句した。

ある程度は予想していた《《凹凸の意味》》が、鮮明に実感してしまった。トカとその信者の自主的に行われた狂気。きっと数えられる程の人数じゃない。

 

目の前にある痕跡が事実だと言って、俺を逃がさない。

 

聞きたくなかった。俺の人生に、こんな現実は介入して欲しくなかった。

 

「お前、、、」

 

ナギの怒りが再燃した。

 

「そういえば人間になるって言ってたのに神気まで解放しちゃってねぇ。《《いいのかしら》》?」

 

「うっっっせぇなぁ!」

 

「確かに彼、《《素質》》はあるわねぇ。でも彼くらいなら、探せば何人かいそうなのよねぇ〜。そんなに彼が大事?」

 

「人間をなんだと思ってんだ!?」

 

「ちゃんと私を愛してくれる子たちは大事にしてるわよぉ? でもあの子たちの愛が行き過ぎちゃった結果なら、しょうがないと思うのよねぇ」

 

「《《そうなるように》》してるだけだろ」

 

「みんな私がいないと不幸になってたと思うわぁ。でも私が救ってあげたのよ? 最期はみんな幸せそうだったわねぇ」

 

「いい加減もう黙れ!!」

 

「ナギだって同じことしてるじゃない?」

 

「違う!!!!」

 

「彼を助けることを対価に、ナギも彼のこと利用してるじゃない? アンタの《《目的》》はわかってるわよぉ」

 

「そんなんじゃない!私は詩生うたきを、、 」

 

「彼のことになると必死ねぇ〜」

 

「真っ二つにでもほしいんだな!?」

 

この神さま懲りないな。頼むからこれ以上ナギを刺激しないでくれ。因縁でもあんのか?

それにナギの目的って、、?

 

ってか俺を置いてけぼりにして俺のこと話さないでほしい。わからないことばかりだし。口を挟めるほどの勇気もないけど、、、

 

でも、一つだけ断言したい。

 

ナギはトカとは違う。

 

ずっと俺のことや人間のことで怒ってくれている。そして俺を守ってくれた。

 

そんなナギが、自分のためだけに誰かを利用するなんてありえない。

 

めちゃくちゃわかりにくいだけで本当は優しくて思いやりがある。やっとわかってきた。

 

たぶんだけど、意外と愛情深いんじゃないかな。

 

だからこそアキさんや四畳半の神さまだってナギを信じてるんだと思う。

 

俺も、、

 

たぶん、、少しくらいは、、、

うん、、信頼、できて、、る、のか?

 

過去のしがらみのせいで自信がない。

 

だけどこれだけなら、、、

 

俺は、《《あること》》をこっそり誓った。

 

「それにしても珍しいわねぇ〜貴方がこんなに早く名前で呼ぶなんて」

 

「はぁ!? 、、、あっ! え、あーーー」

 

ナギは、トカの発言に素っ頓狂な反応を見せた。

 

怒りに満ちた険しい表情は一瞬で崩れ、目を見開いたまま口をパクパクさせる。その後、顔を押さえて震え出し、頭をがむしゃらに掻きむしった。

なんか、制御不能のロボットみたいだった。

 

「あらっ?ひょっとして無意識かしらぁ?」

 

ナギは頭を抱えて黙りこんだ。

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