新版 / 第一章

第一話・下 詐欺の方がマシに思える現実

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「いまいち話が理解出来てないんですけど?」

「さっき僕が理解だけでもして欲しいって言ったの覚えてる?」

「覚えてますけど、、、」

「世の中には‘そういうもの’は実在する。こう言えば、君には受け入れやすいかな?」

「最初からそういう対応して欲しかったんですけど」

「だって君、都合が悪いと話逸らすでしょ?」

「、、、」

「話を進めるね。噂通り、僕は視えるし、簡単な対処はできるけど、さすがに“それ”はちょっと、、、めんどくさい」

「はぁ!?」

 

- 今なんて言った?

 

「そもそも僕は精神科医だからね。あくまで本業のついで。まぁ相性はいいから出来る範囲で対処してたけどね。君のそれはまさしく専門外だよ。もしやるとしても’協力’が必要だし、、、めんどくさいね!」

 

- 聞き間違いじゃなかった。

 

この闇医者は、患者の処置をめんどくさいと言ったよな?

 

- お前の対応の方がめんどくせぇわ!!

 

話は見えてきたけど、マジで付き合いきれない。癪だが言われた通り、理解だけでもしといた方がいいと思う、が、、、限界はとうに超えてる。そのせいか、

 

- 何もかもが胡散臭く思えてきた。

 

「全然、信じてないでしょ?」

「信じられない発言ばかりしてたので」

「僕にもいろいろあるのさ。じゃあこれも言うけど、今まで診察を終えた後に少し肩が楽になったとか、精神的な不安が薄れたとかなかった?」

「ありましたけど、、、」

「君は’惹きつけやすい体質‘だから、いつも来るたびにいろいろ憑いててねぇ」

「はぁ?」

「僕がこっそりと祓ってた」

「聞いてませんよ!!」

「言ってないからねぇ。しかも他の患者のも連れてくるから僕としては都合良くてね」

「うわぁ、、、」

 

- ‘優良物件’ってそういう意味かよ、、、

 

「ちなみに今憑いてるっていうか“マーキング”されてるのは厄介だよ〜」

「それの説明してくれません?」

「言うなれば熊にションベンかけられて、狙われてる感じ」

 

- 絶妙に嫌な例えするのはわざとかな、、、

 

「そんでもって、その対処に適しているのが紹介した仕事先ってわけ」

「今日の診察、もっとスムーズにいきませんでした?」

「君の性格だと簡単に話をしても信じずに、そのまま’のたれ死に‘しそうだから」

 

- 正直、今でも半信半疑。実感もない。

 

「最初は“声”や“触感”だけだった。それが今じゃ、正体不明の”なにか“になって何度も殺しにかかってきている。ってところまで説明すれば充分かな?」

「、、、はい」

 

- 本格的に得体が知れなくなってきた、、、

 

自分の置かれている状況よりも、先生に対して恐怖を覚え始めてきている。今日までの診察が、嘘みたいに思えるほど、、、

 

「まぁいつかはちゃんと説明するから、今だけでも僕を信じてくれない?」

 

- 無理だろ。

 

「とりあえず御守りと紹介状と薬を処方しとくね」

「はい、、、」

 

明らかに精神科で処方されるものじゃないものが、二つ紛れ込んでいる件について。

 

「そんな変な目で見ないでよ。ははは」

 

一回でもいいから自分の発言を省みて欲しい。

 

「御守りが効いたら信じてくれるかな。とりあえず三日後には、この【猫も小判も】ってお店に行ってみて。ナギって子がいるから」

「はい」

「あと君ってお酒好きだよね?」

「はい?」

「君のイチ押しのお酒もついでに持ってって。依頼料みたいなもんだと思ってくれればいいかな」

「はいはい」

 

もう早く帰りたいとしか思わない。記憶には留めているけれど、今はただ、どうでもいい。疲れた。

- 本格的な詐欺の手口ってこうなのかな。

 

「御守りは効いても一週間くらいだから注意してね」

「わかりました」

「あ、待って。次の診察いつにする?」

「電話で予約取ります」

 

どうせ御守りなんか効くわけがない。絶対に病院を変えるぞ。これ以上関わりたくない。

 

「あはは、じゃあまたね」

 

なんてことを言いながら手を振っている笑顔の先生。

去り際、視線の端でその笑顔がさっきの悪どい笑みに変わって見えた気がした。

 

- やっと終わった。

 

それから、診察室を出た後、家に帰るまで、

なにも起きない。

 

時折どこかから見られているような感覚も、

いきなり香る腐臭も

なにもない。

 

「ちっ」

 

- 悔しいけれど認めるしかない、、、のか?

 

猛烈な拒否感が湧き上がるのは、正常な反応だろう。これ以上の思考は身体に良くない。やめよう。

 

ガチャッ。

 

ドアを開けて家に入る。それでも一息はつけない。俺にとっては外も家も変わらない。前までは、安全が保証されてる、落ち着ける空間、だったのになぁ、、、

 

- どうしてこうなった。

 

ドンッ!ドンッ!

 

聞こえてきたのは“天井を叩く音”。

 

それも“怒り”が滲んで聞こえた。

 

もちろん上の階なんてもんは存在しない。

 

先生の言葉が嫌でも頭をよぎる。

 

- 効いても一週間くらい

 

「はぁ」

 

ここは観念して紹介先に行くしかないらしい。

 

- 嫌だなぁ、、、

 

 

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