初期版 / さまざまな神さま

加護と恩恵と苦行と過去

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これから地獄を見るらしい。

 

《《文字通りの意味で》》。

 

散々、地獄みたいな体験を一日でしておいて。

 

お釈迦様でもこんな苦行してないと思う。

 

「釈迦はそもそも苦行とすら思ってなかったぞ?あいつは正真正銘のドMだったね!」

 

こいつ不遜極まりないよな、、、

 

ってか待てよ、こいつ揶揄うのは好きだけど嘘はつかないよな。たぶん。

 

だとすれば、事実か?めちゃくちゃ嫌だな。

 

嘘であって欲しい。なんか、こうイメージ的に。

 

ひとり百面相をしてる俺を見て、ナギは口を大きく開けて笑ってる。やたら長い廊下に声が響く。

 

本当に悪趣味な女だ。女というか人間とすら思えないが。

 

「人間だってば!ずっと《《憧れてたんだから》》」

 

「わかったよ」

 

相変わらず訳の分からないことを言う。

ことにしている。気にしない方がいいんだろう。

 

それにコイツの対応のおかげでだいぶ気持ちも切り替えられた。元凶もコイツだけど。

 

それでも、まぁ、トカって神さまよりはこっちの人間もどきの方が断然マシか。

 

「ふふん!」

 

どうせ、心の中を覗かれてるんだろう。嬉しげに笑ってたが、なにも言わなかった。

 

 

◆

 

 

廊下を進んだ先、玄関から左の奥の扉に着いた。改めて言うと、右に進んだ先の角を曲がると豪奢なホールに着く。あとで聞いたが聖堂と言うらしい。

 

聖堂の華美な装飾の扉と違い、こちらは少し武骨な印象か感じた。木材と金属が半々くらいの重そうな扉で、細部の意匠にはこだわりが感じられる。

 

これも金かかってんだろうな。

 

そういえば教主から前金もらってたっけ?

 

「7割はあんたの報酬にしてあげまーす」

 

「まじで?」

 

「今回は君が頑張るんだからね」

 

「そういえばそうだったよ!当然だわ!」

 

ナギは鍵を開けて、扉を軽々と開けた。

 

ほんと怪力だ。この前も背負われたし。

 

「身体の使い方だよ?」

 

「少なくとも俺には無理だ」

 

「千葉がやるのは辞めといた方がいいねぇ」

 

まともな身体の使い方じゃないのは確定した。

 

「あ、これ渡しとく」

 

ナギはポケットからビニール袋を取り出して、俺に持たせた。

 

「なんに使うんだこれ?」

 

「あとゴミ箱は、、トカに聞けばいいな」

 

まだまだ続く廊下を歩きながら、ナギはそそくさと歩いていった。

 

あとでわかるから今は説明する必要がないって思ってるパターンだな。

 

慣れてしまった自分が嫌になる。

 

 

◆

 

 

「やっぱ臭いねぇ」

 

「臭い?それはわかんないけど、なんか嫌な雰囲気はするな。」

 

また角を曲がれば、いくつかの扉が並んでいた。扉のひとつひとつには格子が付いていて、見たことないが、牢獄を想起させる。心なしか薄暗い。

 

「苦行部屋らしいよ? 釈迦みたいな特殊性癖の人たちがやらされたわけじゃないけど」

 

「拷問じゃねぇの?」

 

「もともとは自主的だったらしいぜ。先代の頃らしいんだけどな」

 

やっぱ宗教施設はイカれてるな、、、

 

「あと、トカの《《加護の特性》》もあってね」

 

「それは説明してくれんの?」

 

「トカを描くなら、《《むしろ聞いて欲しい》》かな」

 

そういえば確かに、、、

四畳半で神さまを描いていたときは、会話を聞かされたおかげでだったっけ?

 

「あー今回は《《顕現》》してもらうから、ちょっと違うだよ〜」

 

「《《顕現》》??」

 

「まず恩恵は、君がトカと駿河の爺さんからもらったやつのこと。前に話した通り、対価として授けられた力。神さまの力の一部をもぎ取って与えられた形だね!」

 

鮮やかに無視された。

 

《《顕現》》については説明する気ないのね。ってか

 

「もぎ取るって、表現どうにかなんない?」

 

「次に加護は、従属契約って言えばいいのかな? 定期的に奉仕をさせられる代わりに寵愛を受けるってやつ。これは神さまの力が見えない触手みたいな形で人間と繋がってる形になる」

 

また無視された。ワザとだ。

今の例えは絶対にいらなかったし。

 

「トカの加護ってのはあだ名の由来にもなってるの。《《等価交換》》の方式でさ、望むものを与える代わりに幸運を奪う。要は均等のとれた不幸中の幸いってやつだね。」

 

うまく理解できたかわからんけどなんとなく、、

 

「タチが悪そうだな、、、」

 

「やっぱチバもそう思う〜? 飴と鞭って言えばいいかな。辛い経験した後に幸運が訪れる仕組みで、信者は依存してくってわけ!そんでさらに望むから自主的に不幸を味わうために苦行部屋を用意したってことなのさ!」

 

まじで提案に乗らなくてよかった、、、

予感的中。

 

「だからアイツのこと嫌いなんだよね!」

 

「あーそれでさっき口論か」

 

なるほど。なんとなく気持ちがわかる。

 

「でーもー、それで救われてる人もいるから見過ごしてあげてんだよね。それに昔に比べてだいぶマトモになったし、しょうがなくだよ?」

 

「ん?昔って、、もっとやばかったの!?」

 

「やりすぎたって話。加護も恩恵も《《契約》》の形だから。足を代償に好きな女に一生加護されるようにするとか寿命を代償に金儲けをさせるとか、それを人を選ばずやるもんだから。私もキレてちょっとねー、、、」

 

急に言葉を切ってナギがまた、目が笑ってない笑顔を向てけきた。

 

これ以上は話したくないから忘れろ

 

そんな風なことを《《目で言ってる》》。

 

うっかり何か言いそうになったんだろう。

でも本能がこれ以上考えるなと警告している。

思考を切り替えないとやばい。

 

ってかこいつが一番怖いんじゃないか?

 

地獄の方がマシな気がしてきた。

 

「お!? なになに? やる気でたー? いいね! もう着くよ! 楽しみだねー!!」

 

ナギは満面の笑顔に切り替えた。

 

だから怖いって、、、

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