初期版 / さまざまな神さま

ドロップキックはアウトだった

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トキと呼ばれている神さま (メンヘラ) に教主を堕おとして欲しいという依頼を受けた。

 

そしたらナギが《《地獄を見せてあげよう》》

なんて提案をしたせいで、俺はそれを描くことに。

 

期待を込めた笑顔を向けられているが、正直言ってぶん殴りたい。

 

他に手はないのか?

 

神さまの力とかさ!

 

 

◆

 

 

「あの〜もうちょっと穏便にとか、、、」

 

「できるなら当にやっているわ」

 

「それに守られてるしね」

 

「仕方なかったのよ。こんなことになるなら《《契約》》しなかったわ。

 

「そこは同情する」

 

「だから自分から辞めるように仕向けないとなのよねぇ。めんどくさい。イライラする、、、」

 

なにかしらの事情があるようだ。

地獄を描くのは避けられないらしい。

 

そしてまた少し再燃した。まじで怖い。

 

中学の同級生が、女の嫉妬は怖いぞって言ってたけど、これはそのレベルマックスだな、、、

 

「チバ!諦めなさい!」

 

「へい、、、」

 

「私!貴方の描く絵を見てみたいわぁ!」

 

神さまの威圧感が柔らかくなった。でも心なしかドロドロしてるような、、、

 

たぶん望みが叶うのを確信しているのだろう。

 

期待の眼差しを向けられている。気がする。

見えないが。

 

一体、どんな姿をしているのだろうか、、

 

たぶん眼鏡を外せば見える気がする。

でも今じゃないな。

 

思慮に耽っているとナギが交渉を進めた。

 

「あ、お代は先払いでよろしく。こいつに恩恵をやってくれ。《《加護じゃなくて恩恵》》な? 今ならアンタも描いたげるから」

 

「はい?」

 

「仕方ないわねぇ。じゃあ、、」

 

またピリってした。

でも嫌な感じはしない。

ただそれだけ。

 

一応、恩恵?をもらえた、、のか?

 

あと加護ってなに?

 

ってかしれっと仕事を増やされたな?

 

毎回、毎回、コイツは、、、

 

俺の意思を無視するんじゃねぇ!

 

さすがに腹が立った。

 

だから俺は、頭の中でナギにドロップキックを喰らわせた。

 

「わっ、ぎゃっ!いっっった!!!」

 

ナギは、イメージ通り急に倒れた。が予想外なことにちょうど長椅子にこけて転がり、最終的に頭をぶつけた。派手に。

 

さすがにちょっと面白かった。

 

「ふふ。言い様ね」

 

たぶん、神さまの力も入ってるな、、

 

「何かしました?」

 

「一つは、《《のちのちわかる》》でしょう。もう一つは、運気を少し良くしたの。」

 

「これって悪運では?」

 

「それは《《わざと》》よ?サービスね」

 

いい性格してるなぁ〜。

 

気が晴れて穏やかに神さまと話してると、ナギがゆらりと立ち上がった。おでこが赤くなっている。

 

「くくっ、、、」

 

俯いたまま怪しげに笑った。そして、神さまの方向をひと睨みした後、俺に顔を向けた。

 

満面の笑みだった。

 

そして一歩、一歩と近づいて、耳元まで来て

甘い声で囁いた。

 

「チバくん。《《忘れた頃に》》ね。」

 

普通だったら、美女に耳元で甘い声で囁かれるなんて極上の体験だろうな。でも俺が体験したのは極限の恐怖だった。

 

腰が砕かれたように、膝から崩れ落ちた。

 

どこまでも気分が落ちて、嫌な想像しか湧いてこない。

 

僅かに理性が働いてなければ叫んでた。

 

頭を抱えて項垂れていると、ナギに蹴られた。

 

「ぐぁっ!」

 

「《《裏》》に行くよ」

 

心なしか冷たい。今回は俺が悪かった。

さすがに反省した。

 

 

◆

 

 

扉を開いて、廊下に出た。

 

「いってらっしゃ〜い。《《あっちで待ってる》》わ」

 

神さまの陽気な声が聞こえたが、今はそれどころじゃなかった。

 

ナギは無表情で黙々と先を行く。

それを俺が俯きながらついていく。

 

また玄関の方に向かって、反対側の方に行くのだろう。

 

そういえば、あそこの扉はそこまで華美じゃなかったな。

 

角を曲がれば見えるはずだ。

 

無意識で俺は現実逃避に走っていた。

 

そしてちょうど角を曲がると、ナギがこちらを向いて仁王立ちしていた。

 

「もう忘れちゃった?逃げちゃった」

 

「あっ、えっと、、」

 

「しかも何度も私のモノだって言ってるのにねぇ〜嫌がっちゃって。」

 

「はい、、」

 

「アタシ〜かわいい女の子なんですが、ドロップキックされちゃったんだよ〜可哀想よね〜?」

 

「そ、そうですね、、、」

 

「《《しかもトカの前で》》」

 

急に語気が強くなった。

これが、逆鱗に触れたらしい。

どうしよう、、、

 

「わかってるならいいんだよ? 《《今は》》」

 

また甘い声で囁かれた。目の笑っていない笑顔で。

 

身体が凍りつく。冷や汗のせいか背中が濡れて服に纏わりついて気持ち悪い。やばい。

 

「さぁー!切り替えて仕事しましょうか!!」

 

急に満面の笑みを浮かべて、踵を返した。

楽しそうに歩き出す。

 

反面、俺は泣き出しそうに歩き出す。

 

「いま考えてもしゃぁない!しゃぁない!」

 

「はい、、、」

 

「まぁそんな落ち込むなって!」

 

「はい、、、」

 

「大丈夫ー? 元気出してー?」

 

「はい、、、」

 

「これから《《どん底に突き落とされるんだから》》さーそんな気持ちじゃ死んじゃうよー?」

 

「は? い、、、?」

 

「《《地獄を描くんだよ》》? 《《地獄を見なきゃ》》!」

 

いつもの悪戯っぽい卑しい満面の笑顔だ。

 

だから、すぐに機嫌を治したのか、、

 

っていうか既に地獄なら見たんだが?

 

「《《本当の地獄を見せてあげるね》》」

 

漫画でしか聞かないセリフを本来の意味で聞くことになるとは思ってもみなかった。

 

今度こそ、俺は死ぬかもしれない。

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