「じゃあチバー!行くよー!さっそく仕事に行きましょ〜!」
ナギが天井に向けて拳をかざし、笑顔で言い放った。
時刻は午後8時、窓に映るのは暗がりと街頭の灯りのみ。
ふざけてるのかな。
「ふざけてませんよ?」
「だから“それ”やめろ!!」
「ごめんごめん、つい癖でね。にしても、もう敬語はもうならんのー?」
「今更無理すぎるだろ」
敬語は敬うという字が使われてるの知ってんのか?
「一応ねぇ、僕は社長みたいなもんだけど?あれれー?」
某少年探偵におちょくられる大人の心情をこんな形でわかりたくなかった。
「待て、給金払うのは榊サカキさんだろ?じゃあ社長じゃなくてバイトリーダーぐらいだな」
「なにそれ!すごそう!」
会話が通じなすぎて、榊さんの方を向いて目で助けを求めた。
「なんでもいいから。さっさと仕事の準備をしてあげなさい」
「はいはーい。ちょっと待っててくださいね〜」
ナギはそう言って2階に駆け上がって行った。
「榊さん、今からやる仕事ってなんなんですか?」
「今日かぁ、、、じゃあ”あそこ“かな?それなら大仕事になるね。忙しくなるよ。」
「なにやらされるんですか!?」
「人助けだよ。そしてナギの言った通り”絵を描く仕事“だよ」
絵を描いて人助け、、、?
「もう少し詳しく教えてほしいんですけど、、、」
「まぁ詳しく説明するよりは体験してみた方がわかりやすいことあるよ。君は考えすぎる気質らしいからね」
「俺ってそんなわかりやすいです?」
「というよりも、ナギとのやり取りのせいで露呈してたかな?」
「それを言われたらまぁ、、、」
「チーバ!ほら!これでいい?」
「うわっ!!」
横からぬるっとナギが現れたせいで驚いてしまった。音も気配も感じなかった。
こいつ下駄履いてたよな。足元を見たけど、ちゃんと履いてる。ぬらりひょんとか妖怪の類いじゃないか?こいつ、、、
「あいつと一緒にしないで欲しいねぇ。私はに!ん!げ!ん!!人間なんです!!」
「人間だったら心を読まねぇよ!!」
「そこは努力中?かな。まぁいろいろとあるのだよ、、、」
そう言うナギの横顔に影が少し見えた。
「はぁ?」
「ほら!このカバンの中身!これで絵描ける?」
慌てるナギの様子から、嫌な部分だろうなと思って敢えて突かず言うようにカバンの中を見た。
三十六色ある色鉛筆のセットと二冊のスケッチブック。
「描けるけど、久々だし上手くできるかわからないぞ」
さらに言うなら、俺は水彩画のが本業だ。色鉛筆を使うならラフなものしか描ける自信がない。
「描けるよ。千葉なら」
「なんで俺のことなのにそんな自信満々なんだよ」
「ちゃんとウチも力を貸してあげるから。あ、違うねぇ。”力をあげる“から」
「は?」
「待てナギ!やり過ぎだろそれは」
榊さんがナギの腕を掴んで少し強めに牽制した。
「あげるって言っても少しですよ。ほんのすこぉ〜しだけあげちゃうの。チバは素質があるからそれだけで”醒める“と思うんだ」
一瞬だけ榊さんが、俺を見てため息をついた。
「いや、だとしてもだな」
「ちゃんと契約前に私は言った。千葉も応えた。だから問題ないだろう」
「今日で終わらせるつもりか?3、4回かに分けてやっても問題ないだろう」
「あいつが限界なのはわかってるだろうアキ?あっ、、、羨ましい?妬ましいのか。ごめんねアキ。でもしょうがないんだ。だからアキも」
「それ以上は言うな」
「榊さん、、、」
「千葉くん、君は悪くないから。それにわかってはいたことだから」
そもそもなんの話だかを伺いたいんですけど。
「チバ!行くか!」
「荷物取るから待ってくれ」
「酒も持って来いな」
「はぁ?」
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旧版第二話 初出勤と少しのいざこざ
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